スーパーコンピュータ「京」を支えたイワサキ品質
国立研究開発法人理化学研究所と富士通株式会社が共同で開発したスーパーコンピュータ「京」。
2012年から2019年にかけて、当時世界一であったスーパーコンピュータ「京」は、
数多くの研究者や企業の方々に広く利用され、素晴らしい功績を残してきました。
イワサキ通信工業は、ケーブルハーネス加工製造の分野でサーバ間データ転送経路部において、「京」の開発に深く関与してきました。
震災の中でもトラブルを最小限に抑え、世界一の称号を得る一翼を担った道のりをご紹介いたします。
目次
プロジェクトの背景
「京」の開発に同軸ケーブルが選ばれた理由
通常、高速なデータ通信を目的とした場合、ケーブルの種類は光ケーブルを使用するのが理想的でした。しかしながら、当時の光ケーブルは耐久性が低いことや劣化した際の交換作業が大変であることが課題でした。そこで注目されたのが、より長く使用でき、交換も光ケーブルよりも容易であった同軸ケーブルでした。
技術的な成長を目指したイワサキ通信工業の挑戦
富士通株式会社・弊社の両社とお取引があったコネクタメーカーからのご縁で弊社に同軸ケーブルのご相談をいただくに至りました。
「京」に必要な性能を実現するためには技術的に難易度が高く、当時の弊社にとっては大きな挑戦でした。
また、「京」に必要な物量も数十万本と膨大な数でした。当時、同軸ケーブルの製造業者として候補に挙がっていた弊社を含めた3社で分担して製造することになっていたのですが、それでも弊社にとってはかなり多い物量でした。
ですが、弊社の社訓に「難有 感謝の心」というものがあります。
「苦難とは幸福を得られる絶好の機会である」という考えのもと、技術的な成長の機会とポジティブにとらえ、全社一丸となって大きな挑戦をすることとしました。
数々の課題。それを
乗り越えたイワサキ品質。
3社で製造予定であった物量を1社で担うことに
順調に進むと思われたプロジェクトですが、数々のイレギュラーに見舞われることとなりました。
当初、3社で製造予定であった数十万本という物量を弊社だけで担うことになってしまったのです。国家プロジェクトといえど、大規模な設備投資や100名規模の増員を行い、それでも必要な性能が実現できなければ投資がすべて無駄になってしまう。そのようなリスクと隣り合わせのプロジェクトでしたので、辞退する企業が出ることは致し方ないことでした。
独自制作した設備・製造ライン
想定していたやり方では間に合わせることが難しい状況となりました。そこで弊社は、今回は必要な性能・物量を実現するために想定していた設備・製造ラインを増強することとしました。既製品を組み合わせるだけでは要件を満たせなかったため、工夫して独自制作することにより必要要件を満たす設備・製造ラインを作り上げました。これまでにお客様のご要望に合わせて、既製品ではない設備を独自で制作し、ご要望に応えてきた実績がありましたが、その集大成とも言えるものであったと自負しております。
その結果、ほぼ出荷不良0に近い品質を実現しました。
東日本大震災を乗り越える
2011年3月11日14時46分頃、東日本大震災が発生しました。宮城県にある本社工場・栗駒工場ともに社屋こそ無事だったものの、設備はすぐに再稼働できる状況ではなく、ライフラインや物流も止まってしまいました。社員も自力では通勤できる状況ではありませんでした。
製造・出荷できるのか、「京」は世界一を取れるのか、一刻を争う事態に全社一丸となって取り組みました。
製造体制の復旧
ライフラインが復旧した後、急速なリカバリーが必要とされる状況に直面しました。社員一人ひとりが「製造ラインを再稼働させよう」と主体的に動いてくれた結果、大型バスとガソリンを確保し、自力で出勤できない社員を支援する体制を整えることができました。また、原料や在庫に関しては、日頃からリスクを想定して適切な量を維持していたため、必要な供給を滞りなく確保できました。出荷に関しては、通常とは異なる運送ルートを模索し、新たな運送会社を手配することで、迅速に対応しました。
終わらない
イワサキ通信工業の挑戦
イワサキ通信工業は、スーパーコンピュータ「京」の開発において、世界中の研究機関や産業界から高い評価を受ける重要な役割を果たしました。「京」は未曾有の科学技術の進展に貢献し、その成功の背後には、当社が提供した極限の精度と信頼性がありました。膨大なデータを迅速かつ正確に処理するため、「京」には最高レベルの品質が求められました。当社は、徹底した品質管理と技術力を結集し、精密部品の製造においてわずかな誤差も許されない厳しい基準をクリアしました。
この実績は、単なる製品提供にとどまらず、長年培ってきた技術力と品質に対する揺るぎない信念の結晶です。イワサキ通信工業の社訓にもあるように、どんな困難にも「難有 感謝の心」を持って挑み続け、さらなる技術革新を支え続けるとともに、社員一人ひとりの成長を大切にしています。今後も、最先端技術の発展を支え、より良い未来を切り拓くためにさらなる挑戦を続けてまいります。